骨軟部腫瘍の診療について

シンフォニー病院における骨軟部腫瘍の診療

骨軟部腫瘍とは簡単にいえば手足に出てくる腫瘍のことです。具体的には脂肪腫、血管腫、骨肉腫などが有名です。骨軟部腫瘍は数が少ないわりに269もの種類があり、加えて診断・治療も複雑です。そのため骨軟部腫瘍の診療をする医師は多くの経験と知識を必要とします。もちろん市中病院で骨軟部腫瘍の経験を多く積むことは困難ですので、がんセンター、大学病院などの施設で修練を積む必要があります。現在、日本の整形外科医は2万5千人以上いますが、骨・軟部腫瘍認定医の数は170名程です。栃木県内では5名です。

当院では、骨・軟部腫瘍の専門家で認定医(矢澤康男医師、元栃木県立がんセンター医長、埼玉医科大学名誉教授)が骨軟部腫瘍の診療にあたります。骨軟部腫瘍の画像診断、病理組織診断、外科治療(主に良性腫瘍)を行っています。セカンドオピニオンにも対応しています。近くの病院で骨軟部腫瘍疑いと言われたときは是非ご相談下さい。

骨軟部腫瘍について

骨軟部腫瘍の多くは良性で人体に害を及ぼすことはほとんどありません。しかしながら悪性の場合は増大することにより体の組織を壊し、転移を来たして最終的に命を奪います。手足に出てくる悪性の骨軟部腫瘍は古くから「肉腫」とよばれ、肺、胃、子宮などから出てくる悪性腫瘍の「癌」とは区別されてきました。肉腫の発生頻度は10万人あたり6人未満で、これは肺癌の20分の一にあたり、かなり稀なので「稀少癌」とも呼ばれています。年齢は子供からご高齢の方までまんべんなく発生しますが、年齢によってその種類に偏りがあります。例えば子供には横紋筋肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫が多く、成人以降は脂肪肉腫、未分化多形肉腫が多くなります。症状として月の単位で大きくなることが特徴ですが、残念なことに初期は痛みがないので、診断されたときはかなり大きくなっていることもあります(図1)。痛くないから大丈夫、脂肪の塊と言われ放置されていた人もいます。診断は視診、触診だけでは分かりませんのでレントゲン、CT、MRI検査などを行ってから組織を採取して顕微鏡で確認します。肉腫の手術は「広範切除」と言われ、周辺の筋肉、脂肪、骨で包み込むように切除しますので、良性腫瘍の手術より大きな手術になります。切除後の欠損も大きくなるので、皮膚・筋肉が移植されます。さらに骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫では抗がん剤治療も行います。抗がん剤は1年近く行われ、かなり高度な治療となりますので行われる施設は限定されます。

図1 太ももの後ろにできた肉腫(矢印)です。近医で良性腫瘍と診断され2年間放置されていました。

「無計画切除」について

上記の如く肉腫の診断にレントゲン、CT、MRI、組織検査は必須ですが、これらの検査をおろそかにして手術を行い手術後に肉腫と診断される事があります。このような安易な切除は「無計画切除」と呼ばれ、慎むよう学会が勧告しています。https://www.dermatol.or.jp/modules/news/index.php?content_id=536

無計画に切除した場合、むしろ腫瘍が広がることにより広範切除が困難になり、再発を繰り返したあげく患肢を失うことになります(図2)。特に軟部腫瘍で増大傾向があるものは、例え小さくてもしっかりと検査・診断することが重要です。少しでも悪性を疑うばあい、検査は画像検査に留め、生検をせず、そのまま専門施設に紹介することが推奨されています。当院は肉腫の診断が行える専門施設にあたります。

図2 左膝の内側にできた肉腫です(黒斜線部)。近医で無計画切除を受けました。

骨転移について

転移性骨腫瘍とも呼ばれ、内臓に出来た癌(肺癌、乳癌、前立腺癌、腎臓癌など)が骨に飛んでしまった状態です。一般的に癌は転移しますと治癒は困難で、治療目的は疼痛緩和、機能改善、延命が主体になります。特に困るのが癌により骨折や神経麻痺を起こす場合で、その際は手術などで積極的に治療します。骨折がない場合は元の癌治療に準じて放射線治療、抗がん剤、ホルモン療法を行います。骨転移の治療は一般整形外科医でも行っていますが、治療方針、手術適応などはやはり専門医の判断が望まれます。骨転移の対応について迷っている場合はシンフォニー病院にご相談ください。

また骨軟部腫瘍に関わる最先端治療、あるいは民間療法についても可能な限りご説明します。